イドのなんらか

TRPGしたりキャンプしたりするITエンジニアの人間が書く雑記

炎を見て思うこと

燃え尽きる孤独

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熾火

今日は庭先バーベキューをした.

コロナ禍で焼肉に行けないけど家族で焼肉がしたいので,妥協案として実行されたイベントである.

 

地元の肉屋で美味い肉を仕入れ,美味い酒を買い,昼下がりから日没までの間でバーベキューをした.

100gあたり1000円の肉を,いろいろやって450円で仕入れることに成功した.

牛の頬の部位の肉だが,相当に美味しかった.

 

僕はワインを飲んだ.

父はハイボールを飲んでいた.

兄はホッピーだ.

母はお酒が飲めないので,烏龍茶を飲んでいた気がする.

 

結果としては,良いバーベキューになったと思う.

火の管理とか後片付けとか,いろいろ面倒なことは多いけど.

いかんせん,炭火焼きはいろいろと手間がかかる.

 

やはり焼肉屋は偉大だと思った.

換気とサービス料だけでも相当に価値があると思う.

 

さて,僕は主に火起こしと火遊び,そして後片付けを担当した.

ソロキャンプをしているし,火いじりはそこそこに適正があるからである.

 

火起こしにはエコココロゴスを使用した.

着火時に煙が立ち,独特の刺激臭がするが,種火としてはなかなかに優秀な炭である.

チャコスタで岩手切炭に火を移し,火起こしは難なく完了する.

時間にして30分程度であった.

 

まぁチャコスタ使うよりもピコグリルの上で直接火を起こした方が早かったけど.

やはりピコグリルは偉大だなと思った.

今度,手持ちのキャンピングギアの紹介でもしようかと思う.

 

さて,火遊びにおいて最も面倒かつ重要なのは,後片付けである.

これが本当に面倒だ.

 

水をかけて鎮火する手もあるが,爆ぜるし汚れるし,何より炭と灰を下水に流すことになるのでこれは最終手段だ.

基本的には,炭が燃え尽きて灰になるのを待つことになる.

 

今日は4kgの炭を起こした.

こいつらが灰になるまで,10時間くらいかかった.

持続の良い岩手切炭だが,それでも黒炭なので持続時間は大したことはない.

昼に起こした炭が灰になるまで,一日中見て居られるのだから楽な方である.

 

僕は火が尽きていく姿を見るのが好きだ.

炭が燃えていき,灰へと変わるプロセスに,いくばくかの神秘を感じる.

 

4kgあった炭がすべて燃え尽きると,わずか数十グラム程度の灰になる.

炭に含まれていた大量の炭素は,燃焼反応で空気中の酸素と結びつき,二酸化炭素に変わってしまったのだ.

 

人間の身体もまた,同じ反応を体内で行っている.

糖質,すなわち炭素を血中の酸素と反応させ,エネルギーを得ている.

 

炭は炭素が尽きると,やがて灰化という死に至る.

人間はそのプロセスに抗うために,多くのメカニズムによって生命活動を維持しようとする.

 

僕の命も,いずれ尽きるときがくる.

燃え尽きて,いずれ屍となる.

 

炭たちは10時間をかけて,僕の身体を燻し尽くした.

おかげで身体が煙の匂いでくさい.

 

彼らは燃えることによって,僕に対して匂いという存在証明を残していった.

僕が燃え尽きるとき,そこに僕の存在証明は残るのだろうか.

 

僕が生きていたという証は,未来永劫残ることはありえない.

煙の匂いが薄れ,僕がそのストレスを忘れていくように,僕が存在していたという事実もまた薄れて消えていく.

 

僕は生きるために生きている.

がむしゃらに藻掻き,足掻き,葛藤して,その過程で生まれた何かが,誰かを幸せにできればいいなと,恥ずかしげもなく思っている.

 

炭のように,くさい存在になれば何かを残すことができるのだろうか.

まぁ煙も一種のアロマなので,良い匂いといえば良い匂いなのだが.

 

そんな何の得にもならない空想にふけりながら,僕のGWは過ぎていった.

明後日からは就活が再開される.

僕は痛みの中で生きることになる.

 

せいぜい,痛い自分を演じることにしよう.

まずは試しに,くさい人間になってみようと思う.

火遊びに喜ぶ僕のように,それを面白いと感じる者が,きっとどこかにいるはずなのだから.